コーヒー・バーの出現 from New York Style
グルメコーヒーのチェーン店「スターバックス」が市内に急増したこの十数年で、アメリカンコーヒーはすっかり衰退し、代わりにカプチーノやエスプレッソが市民権を得るようになった。そして最近では、さらに高品質のコーヒーを扱う店を探し出すのが通らしい。
「今まで、本当に美味しいコーヒーを飲めるところがなかったので困っていたんだ」と話すのはシアトル出身のあるコーヒーファン。彼が常連となっている「カフェ・グランピー」は、静かな通りに面した個人経営の店だ。だが、目立たない表構えのカフェに一歩足を踏み入れると、店内には上質なコーヒーの香りが満ち、顧客たちは賑やかに話をはずませている。
「シーズンごとに輸入業者にカスタム・オーダーした豆を、自家焙煎し、カップごとに豆を挽いて出しています。この秋には五種類のシングルコーヒーに、エスプレッソ、ディカフェをメニューに加えました」と話すのは、オーナーのキャロライン・ベルさん。日常生活のペースが早く、コーヒーを味わって飲む習慣のなかったニューヨーカーも、ようやくコーヒーの品質にこだわるようになったのだという。
「スタンプタウン」「ブルーボトル」「フォーバレル」など、現在米国内でのコーヒー産業の中心である西海岸発祥のコーヒー会社が、最近ニューヨークに焙煎所とショップを開店したのをはじめ、コーヒーをいれる技術を職人芸として扱うようなコーヒーショップが、今では40軒ほどに増えた。
これに従って出現したのが、“コーヒー・バー”である。インターネットの急激な進化に伴って、フリーランス人口の多いニューヨークでは、コーヒーショップはすっかりホームーオフィス化していた。店内は、ノートパソコンと携帯電話を持ち込み、数時間悠々と仕事を続ける人々で占領されることもしばしばだ。
「でも、カフェを仕事場に利用するのは、本来の目的から外れていると思う」と語るベルさんは、インテリアを変えることで、ノートパソコン持ち込みお断りに踏み切った。広いテーブルや居心地のいいソファの代わりに、カウンターやバーテーブルにスツールを導入したのだ。そして、顧客の間でもっと会話を楽しんでほしい、とベルさんは言う。
バー感覚でコーヒーを注文することで、空間はより賑やかになり、知らない人同士でも気軽に言葉を交わしあう雰囲気が生まれる。オーナーにとっても、席数が増え、顧客の回転も早くなることから、単価の高い特注自家焙煎コーヒーを扱っても採算が合う。ニューヨークには今、そんなコーヒー・バーが密かに増えつつある。
モバイル端末なしでは生きられないニューヨーカーも、コーヒーカップを挟んで過ごす、人間的なひと時を切望しているのかもしれない。

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